Q1.労契法改正で雇止めが難しくなったが「雇止め予告」との関係は?

 労働契約法の改正で「雇止め法理」が明文化されましたが、経営側の都合により簡単に雇止めができないという意味に理解しています。一方、雇止めの際には「30日前までに予告する」よう指導がなされています。「事前予告」しても、「雇止めができない」のなら、予告制度に意味があるのでしょうか。

 

A1.予告しても無効のケ-スも

     Y01A133.jpg 雇止めに関するご質問に答える前に、解雇に関する規定を復習してみましょう。
労基法第20条では、「解雇の少なくとも30日前に予告しなければならない。予告しない使用者は、30日以上の平均賃金を支払わなければならない」と規定しています。

  予告義務を怠れば、労基法違反で罰則を科されます(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が、予告(または手当の支払)をしたからといって、解雇が適法と認められるわけではありません。
 解雇予告制度は、「労働者が突然の解雇から被る生活の困窮を緩和するため」設けられているものです(労基法コンメンタール)。
 解雇が有効か否かは、現在では、労働契約法第16条により、別に判断されます。適法に予告しても、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」、解雇は権利濫用で無効となります。 
 有期契約労働者の雇止めに関しても、法律的な取扱いは同じような構図となっています。 
 雇止め時の予告は、告示(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平15・10・22厚生労働省告不第357号、平24年改正)を根拠とします。「有期労働契約(3回以上更新し、または1年を超えて継続しているものに限る)を更新しないときは、期間満了の30日前までに、その予告をしなければならない」と規定されています。 
 こちらは告示で、労基法第20条に基づく解雇予告のように、罰則は付されていません(もちろん、指導の対象にはなります)。解釈例規(平15・10・22基発第102 2001号)では、「雇止めに関する基準は、契約期間満了に伴う雇止めの法的効力に影響を及ぼすものではない」と断り書きを付しています。 
 雇止めの予告等の基準は、「有期労働契約の締結・更新・雇い止めに際して発生するトラブルを防止し、その迅速な解決を図る」ため、設けられているものです。
 適法に雇止めの予告をしても、雇止めが有効か否かは、労働契約法第19条に基づき判断されます。「雇止めが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、従前と同一の労働条件で契約が更新された」とみなされます。
 事業主として、罰則や指導の対象とならないように、解雇・雇止めの予告手続を履行すべきなのは、いうまでもありません。しかし、予告義務を果たしても、個別紛争解決促進法に基づく調停や裁判を必ずしも回避できない点には注意が必要です。